ジャガイモの芽
コンビニのベンチに座って、寒い冬の冷えた缶コーヒーを啜っている。
「ほんの少しの未来ってなんだ?」
人生はさよならが隣り合わせだから、「あの時こうしていれば」「あの日に戻れれば」と思わずに生きられない。
思えば、ひどい言葉も言われたし、こんな毎日はどうせ無駄なんだろうなと思うこともあった。
でも、そんなだらっと続くゆるい幸せこそが、思い返せばとても素敵だったと思う。
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ジャガイモの芽のことを「ソラニン」と呼ぶのだと知ったのは、今からもう9年も前になる。当時中学生の僕は、宮崎あおいが煙草を吸っているのを見て、なんとなく始まるセックスの描写を見て、バンドマンの日常を見て、それはそれは憧れたものだ。
ムスタングのギターが欲しいと思ったが、絶対同じような考えのやつがいるだろうと思ってジャズマスターを買ったのも、ある意味ではソラニンの影響なのかもしれない。
前置きが長くなってしまったのは、彼女と別れたことを認めたくないからだろうか。あるいは、現実を受け入れられないのだろうか。
ジャガイモの芽が放っておくと生えてくるように、僕達の関係も知らない間に終わりに近づいていったのだろう。ぜったいに離さないと誓った右手は、案外簡単に、するりと解けてしまった。
悪い種のおかげで僕達は離れ離れになってしまったけど、僕もどーにかやるので、君もどこかで元気でやってほしい。
僕は今、「ソラニン」を聴いている。