マルチにハマった親友とハマらなかったワイのはなし

はじめに

これは僕がマルチ商法に勧誘されるまでの経緯を綴ったブログです。マルチ商法が悪いと言いたい訳ではなく、僕は違うなと、違和感やなと思って手を引くまでの経緯を記します。参加していたコミュニティの人たちはこのやり方が良いと信じて勧めて来るだけで、悪い人たちではありません。もちろんこのマルチ商法はれっきとした合法のビジネスで、世界中に展開されている有名な手段です。一個人の感想として誤解なきようにお読みください。

 

 

 

 

 

 

「俺、営業の仕事向いてないんかなあ」

 

2021年9月、精神科の看護師をしている親友に相談を持ちかけた。同じ町内の野球チームで小6の夏休みから中3の冬までプレーした仲、小中高大といずれも学校は違ったが、ほどよい距離感で定期的に遊ぶ仲。人生の節目節目で色々と相談をしたりされたり、結婚式のカメラマンをしてくれたり、親友、親友彼女、僕、嫁の4人で飲みに行ったりと、かなり信頼を置いている男である。

 

そんな彼から、

 

「今度セミナーがあるし行ってみない?考え方が変わると思うよ」

 

とアドバイスを貰った。彼は2021年の頭くらいからやたらビジネス書の読書にハマるようになり、感想をインスタのストーリーに書いたり、緊急事態宣言の最中飲み屋に呼び出されて本の感想を語られたりと熱意を持って勉強していた。

聞けば、読書会のコミュニティがあり、その主宰者が経済や生き方のセミナーを行っているとのことで、物は試しにと参加することにした。

有名大学を卒業後、一流企業で働くも、将来の不安を感じ自分でビジネスを始めたい、始めて成功したという20代後半〜30代前半のコミュニティであった。「意識高い系」じゃなくて「意識が高い」人達の集まりなんだ、と誰かが言っていた気がする。

 

そのコミュニティのスケジュールはこんな感じ。

月曜日 木曜日:経済セミナー

水曜日 土曜日:キャッシュフローゲーム

日曜日:読書会

 

まず経済セミナーについて、参加していると、大凡の内容が掴めてくる。

・日本の年金制度が崩壊している→年金が貰えない

・終身雇用が崩壊している→退職金が貰えない

・80年代、銀行の預金利息は7%だった→今は0.001%

・稼ぎ方に良い悪いは無い(詐欺等の犯罪は除く)→マクドは毎日食うたら病気になるのに皆いい会社だと思ってる

・価値観を明確にしてその為に何をするか手段を考える

・原則中心のパラダイム ある物事について1つの側面から見たら正しいとも言えるし違う側面から見たら間違っているとも言える

 

だいたいこんな感じで、確かにこのままサラリーマン続けてたらやばいよなあ、と危機感を持つようになった。

 

次にキャッシュフローゲームについて、このゲームの解説書として書かれたロバート・キヨサキの『金持ち父さんシリーズ』を基に1卓6人で進めていく。

このゲームはサイコロを振って株や不動産のカードを引いて売り買いしていく、人生ゲームのようなイメージが近いと思う。やってみると割と面白く、且つ数字にも強くなれるゲームである。目指すは不労所得(金持ち父さんシリーズでは「Bクワドラント」を目指すと書かれている)を得ることで、これを現実にも応用させていこうというものだ。

 

最後に読書会について、各人が持ち寄った本の感想のシェアと内容の議論という、面白い集まりだった。自分で言うのもなんだが読書は非常に好きなので、小説でもビジネス書でもなんでもこい、という感じだった。周りからどう思われていたかは知らないが、わりと議論に対して意見を述べる回数は多かったと思う。

 

とまあこんな感じで1週間のスケジュールが埋まり、仕事以外の時間をこのコミュニティに充てるようになった。もちろん親友もほぼ毎回一緒に参加した。帰り道ドライブをしながら夢を語り合い、セミナーの内容を振り返り、家に帰るのは24時を回る毎日だった。暇さえあれば読書をし、空いた時間はセミナーに参加する。お金の稼ぎ方を勉強していた。嫁も僕の熱量を汲み取ってか、本を買うことやセミナーの参加費駐車場代などお金はかかったが、それでも応援してくれていた。

 

そうして僕の中では

不労所得を得て時間とお金に縛られない生活をする

・結果家族との時間を得る

・やりたいことを叶える

こんな目標が出来上がった。

 

親友に何度か聞いたことがある。

「このコミュニティの人たちは主宰者の方含めてどんなことをフリーランスでされてるの?人に興味があって、なんでこの人はここにいるのかとか、どんなことしてるかとか、気になってしまうんよ」と。

 

それに対する彼の答えはこうだ。

「それは教えられないな。めちゃくちゃ凄いシステムだから、本人から聞く以外方法はない。自分から伝えたら情報の価値が下がってしまう」

 

この答えが今の僕にとってはアホらしく聞こえるが、当時の僕は「そんなすごいビジネスなんやな、とにかく勉強して教えて貰えるように頑張ろう」と思っていた。

 

誰にでもこのビジネスを教える訳では無いとのことなので、課題図書を全部読んだり、継続してセミナーやゲームに参加することで教えてもらう権利を得ることが出来た。

 

結局、3回に分けて説明を聞くことになるのだが、

1回目:具体的には言わない 成功するビジネスの法則など

2回目:翌日社名まで言うからと小出し

3回目:社名と何をしているかを聞く 

 

こんな感じで話を聞くことになった。

3回目の説明の後、実際に販売する物を試してみようと親友に連れられオフィスまで足を運んだ。親友がその製品を僕に紹介しようとするのだが、説明の仕方がとにかく雑だった。知識不足と自信のなさが目に見えて分かった。営業ロープレでバチクソに怒られるタイプのやつ。

僕は思わず「自分がいいと思ってるビジネスを人に紹介する態度がそれなんか?こっちは真剣に学びに来とるのにその理解度はどうなんや?」と周りの目も気にせず怒ってしまった。親友は申し訳なさそうにしていたが、ビジネスをやるんだと意気込んでいた僕は続けて説明を聞くことにした。

 

その翌日、今度はそのビジネスの給料の仕組みを教えてもらった。簡単に言うと自分で製品を売るか、一緒にやる人を見つけてチームで売っていくような感じだ。ここで違和感を覚えたものの、「まあ営業から営業に転職したことやし、結局これも製品を売る営業と同じやもんな」と自分を納得させることにした。

 

夕方は全体ミーティングのようなものがあり、1週間の報告を各人が行っていく。「何名をどのセミナーにアテンドしました」「このセミナーに来てくれそうだったんですが急遽キャンセルになりました」

このあたりで僕の頭の中に「?????」が浮かぶようになったが、製品説明のパートなどを受け、解散。

 

この「?」の正体を暴くべく、実家にいる嫁の元へ走った。嫁と合流後、色々話し合った結果

 

「これマルチ商法じゃね?」

 

という結論に至った。というか嫁は気付いていたようだった。家族のためにという大義名分があったし読書自体は良い事だから見逃していたけれど、と。

 

よくよく考えてみれば、参加者の危機感を煽って、お金の稼ぎ方に良い悪いは無いんだと植え付け、価値観を明確にさせて夢を見させる、教えてもらうまでに時間がかかるくらい凄く価値のあるビジネスなんだと思わせる、これを洗脳と言わずになんと呼ぶ。

 

ということで、あとはTwitterに書いた通りで親友とは決裂、僕は元通りの生活へ、というところ。気分は決して良くないが、済んだことは仕方が無いので良かったところだけでも振り返っておく。

 

・色んなビジネス書に出会えた 

特に、森岡毅の「苦しかった時の話をしようか」には感銘を受けた。熱烈なファンになってしまった。マーケターという職業の良さに出会えた。

・人は信用出来ないということが学べた

自分がどれだけ親友と思っていても、相手はビジネスの勧誘相手にしか見てなかったということになる。これを26歳で経験できたのは非常に貴重だったと思う。

 

とまあつらつらと書きましたが昨年後半から今年にかけて、本当に色んなことが起きました。毎年何かある、起きなくていいことも起きる、いい加減にして欲しい(そういう生き方しか出来ない)です。

 

今年もまた何かが起こりそうな気がする。

 

おぜんざい